シングル曲のチャート分析から見るモーニング娘。の見方
モーニング娘。54枚目のシングル『わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団』がリリースから一週間で144,061枚を売り上げ、オリコンウィークリーチャート1位を獲得。
デイリー売上が2日目にして累計10万枚を越えてTLが今年一番の高揚感に包まれ、15万枚に迫ろうかという週末にはこんなことを思っていました。
あと6120枚で『ここにいるぜぇ!』に並ぶんだね。『Do it! Now』と『ここにいるぜぇ!』の間の3ヶ月に割って入るというのは【ゴマキの時代】の目前まで迫ることになる。
……って、あくまで単純比較で、今の娘。は新しい試みですけど。 pic.twitter.com/asr10RkDzf
— もかまっちゃ (@_mochamacha_) 2013, 9月 1
(続き)ただホントに過去と比較するなら、売れている実感はロングセラーかどうかがポイントで、連続ランクイン週数は【ゴマキの時代】以降の一年間は2ケタで安定してる。一過性のブームかどうかはココの比較と配信チャートが見どころなのかな、と。 pic.twitter.com/F1RpcCAFkI
— もかまっちゃ (@_mochamacha_) 2013, 9月 1
結果的に、『ここにいるぜぇ!』以上『Do it! Now』未満のレンジに食い込む結果を残しますが、いくら【ゴマキの時代】目前なんて言っても、今のモーニング娘。の世間の認知度は当時とはまったく違います。では、今後の見どころはどこにあるのか。
これに関連して、昨日のネット記事で、面白い分析がなされていました。
バキバキの音楽性でチャート1位! モーニング娘。の“とんがり路線”を支えるビジネスモデルとは(1/2) - Real Sound|リアルサウンド
ざっとこんなことを言っています。
- 初登場1位は今年1月リリースの「Help me!!」から3作連続
- 好調の理由は、「複数リリース+握手会参加券」という商品構成
- この採用により、EDMなど先端的な音楽性をバキバキに詰め込んだ、とんがった路線の成功へとつながっている
- 今回の初週14万枚という売り上げは、近作の累計売り上げ枚数を上回る、今後が期待できるタイトル
売上好調なモーニング娘。について概ね好意的な評価をしています。
が、最後に今後の課題について触れています(以下、抜粋)。
ただ懸念材料としてはモーニング娘。のシングルは数年前から発売後数週でチャートの200位圏外に落ちてしまう傾向にあり、近作でもそれは続いている。運営側としては最終的な累計売り上げ枚数に加えて、そろそろ10週以上チャートに残るロングヒット曲を作り、「モーニング娘。ここにあり」というイメージ作りをしたいところではないかと思われる。 |
今回、3作連続一位という結果に「11年ぶり」という見出しが踊りましたが、実はロングヒットもしばらく経験していません。
以下は、上のツイートに添付した画像に示したこれまでのモーニング娘。のランクイン期間の遷移ですが2005年以降も続けて並べると以下の通りになります(シングル曲のタイトルの右隣は初週の売上枚数、右端はランクインした期間。網掛けの枠は10週間以上を表す)。
■ランクイン期間から見えること
すご~く大雑把に、結論から言ってしまうと、ロングヒットが 【国民的アイドル】 の曲なのだと思います。網掛け部分を3つに分けてみると、このように説明がつきます。
<番組デビューのグループを見つめる時代:2nd.-4th.>
今よりもみんなが同じ番組を見ていた15年前、2枚目『サマーナイトタウン』から4枚目『Memory 青春の光』は、『ASAYAN』を見た視聴者に応援されており、数々の新人賞を獲得して『紅白歌合戦』の出場を果たします。しかしまもなく、それまでのアイドルグループと同様、燃え尽き症候群的に下降線へ。
<楽曲が国民的に流行した時代:7th.-20th.>
誰もが知る7枚目『LOVEマシーン』から20枚目『Go Girl~恋のヴィクトリー~』までは押しも押されぬ時代。お遊戯会の踊りを習う園児から忘年会の出し物の品定めをする会社員まで、リリースの度に国民的にチェックされていました。
<国民的アイドル辻加護の卒業:23rd.>
ごっちん、圭ちゃん、なっちの卒業の頃、「卒業ビジネス」と揶揄されるようになると、10週連続ランクインを果たすことが難しくなります。「国民的アイドル」モーニング娘。の一般的な顔であった辻加護の卒業シングル 23rd.『女子かしまし物語』を最後に、二桁ランクインに達するシングルは現れていません。
それ以降、ファンだけが知っている楽曲ばかりとなります。
こうやって振り返ると、後出しジャンケン的な結果論ではありますが、10週間以上ランクインすることがファン以外の一般層からの興味を得ていることに一致していて、どうやらロングヒット曲を持つことが「一般に知られるアイドル」の必要条件であるようです。
今後の目標、というか求められる結果はここにありそうですね。
■そもそもCD売上は古い指標
ただし、ひとつ踏まえておくことがあって、これはiPod&iTunes普及以前の常識となります。今、一般的な音楽の楽しみ方として、「CDシングルを買う」という選択肢はほぼ無くなりました。音楽が好きな人であっても、自分が応援している歌手のCDを買うことはあっても、それ以外の歌手・グループであれば【YouTubeでPV視聴】→【ダウンロード配信】でしょう。*1 ですので、「シングルが10週以上売れたら国民的アイドル」というのは過去の理屈で、今後も当てはまるものではありません。
ただし、グループがどういう状態にあるのか知るために、世間の認知度やファンが増えていることを知る上での指標として踏まえておきたい数字であることは間違いないと思います。
懸命なプロモーション活動から、めざましライブ、Mステ出演を経て、熱い思いで迎えた今回のリリース。ひとつの楽曲の評価に一喜一憂する一週間でしたが、今後は長い目線で「今のモーニング娘。」の評価を見守る方向に変わっていけるといいなあと思いました。